「Oxymoronの宣誓」とmiroirの「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」
4月2日。私はこの日を忘れることはないだろう。
─────この日、私の好きな声優はアイマス声優になった。
はじめに
3月28日、アプリ「アイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージ」にて、とあるイベントの予告がなされた。
イベントは「LIVE Parade」。対象は初登場の新アイドルとなる久川颯、久川凪。どうやら双子らしい。2人はユニット「miroir」としてアイドルデビューすることが発表された。
そして来たる4月2日、イベントの開始と共にキャスト(久川凪役に立花日菜さん、久川颯役に長江里加さん)、イベントコミュ、予告にあったデビュー曲「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」が公開された。
4月16日フルverが配信される。
さて、今回はこの曲「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」について考察していこうと思う訳ですが、その前に、この曲を歌う2人のアイドルについて簡単に紹介しようと思います。
アイドル・久川颯
まずは久川颯。楓ではなく颯。久川姉妹の双子の妹です。
性格は天真爛漫。表情が豊かであらゆるものに活力的で自信家。ちなみに朝は和食派。14歳にしては比較的スタイルが良く、顔も良い。
颯はアイドルに憧れを持っていて、アイドルになる為にオーディションを受け、合格してアイドルになります。
昨今のシンデレラガールズにしては珍しい「アイドルになりたい!」という気持ちで前進する真っ直ぐな正統派アイドル、これが久川颯です。
アイドル・久川凪
続いて久川凪。ネギではなく凪。久川姉妹の双子の姉です。
性格は...何と言えば良いだろう。感情が表に出にくく、独特のワードセンスを持っているのが大きな特徴で、趣味「マンションポエム」を見れば分かるように、言ってしまえば不思議ちゃんです。
朝はパン派。スタイルは颯ほど良いわけではない普通のJC体型。顔は良い。
突出した個性を持っているという点では従来のシンデレラガールズらしい個性派アイドルと言えます。
アイドルに強く憧れる颯に対し、凪はアイドルに全く興味がありません。颯のオーディションに付き添いできていたところをPにスカウトされ、それを断り切れず、というのが凪のスタートになります。
miroir
miroirとは「鏡」です。
ここまで書けば分かるかと思いますが、颯と凪は双子でありながら、まるで正反対。
それはまさに対照的に映る鏡のように───。
これが2人の大きな特徴であり、ユニットの大きなテーマにもなっています。また後ほど解説しますが、曲を彩る「チグハグさ」もこれに由来するものでしょう。
そんな不思議な2人の個性を活かしたユニットこそが「miroir」です。
ちなみに「颯」というのは風が吹く様、キビキビした様子のこと、「凪」は風や波が静まった無風状態のことを指します。
風が吹く「颯」と静まった風の「凪」で名前からも2人のチグハグな個性が表れています。
O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!
ここから、本題である「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」について話をしていきます。
作詞・作曲:烏屋茶房さん。作曲・編曲:篠崎あやとさん。 歌唱はもちろん「miroir」「ポップでキャッチーでかわいくて、とにかくすごいよ!」と、颯が予告をしていましたが、全くもってその通り。ポップでキャッチーなメロディラインがなんとも気持ち良い。
軽快なカッティングギター、ポップなメロディとは対照的に響く強めの低音、突然始まるfuture bassなど、聞き所を挙げれば、枚挙にいとまがありません。
そんなメロディと合わせて、難解で遊び心に溢れた歌詞が展開していく流れが非常に面白く、ユニットが持つ空気感を見事に表現しています。
また、歌詞を読み取っていくと「miroir」のパーソナリティーな部分も見えてきて、単純な曲としての素晴らしさもさることながら、デビュー曲としてもこれ以上ない一曲だと言えるでしょう。
それではここから、そんな「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」を歌詞を追いながら考察していきたいと思います。
冒頭(語りパート)
※以下から歌い分けをカラー別に、颯、凪、全員で表記します。
※今回はイベントコミュ「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」とそれぞれのアイドルコミュを踏まえた考察になっています。
(続いて、ラジオネーム“おもしろくん”さんからのお便りです。)
(大好きな人の隣の席にいるのに、話が噛み合いません。どうすればいいですか?)
(んー、べつにいいんじゃないですかね?だって)
曲の冒頭、凪の語りパートから曲が始まります。 「ラジオネーム"おもしろくん"さんからのお便りです」とあるように、どうやらここはラジオ番組らしく、そこに一通のお便りが届いたようです。
「大好きな人の隣の席にいるのに、話が噛み合わない」
青くさい恋のお悩み。
それに対して、恐らくパーソナリティーである凪は「別にいいんじゃないですかね?」と回答し、「だって…」と続いたところで歌パートが始まります。
"噛み合わない2人"。でも、別にいい。
「だって…」と続いていくところを見るに、どうやらこの理由を"似てるけど正反対な双子"である「miroir」が、曲を通して説いていくことが、この曲の大きなテーマなのでしょう。
冒頭(歌い出し)
チカク/テ/トオイ/スグトナリ
二人はTig-HugなOxymoron,Yes
アマク/テ/スッパク/テ/ハジケタリ
それなんてTig-Hugなオクリモノ,Yes
チカク/テ/トオイ/スグトナリ
二人はTig-HugなOxymoron,Yes
ワタシ/ト/キミ/ノ/ヒトトナリ
二人はTig-Hugな
Oxymoron(オクシモロン)…撞着語法のこと。意味の矛盾する語句を並べて、言い回しに効果を与える修辞法。「無慈悲な親切」「ゆっくり急げ」など。ギリシャ語のOxy(鋭い)とmoron(鈍い)を組み合わせた言葉。
Tig…鬼ごっこ
Hug…〜を抱きしめる
近くて遠い。甘くて酸っぱい。チグハグ(Tig-Hug)。そしてワタシとキミがOxymoronになっています。
ワタシとキミは大好きなのに噛み合わないおもしろくんとその想い人、そして双子なのに正反対な凪と颯の関係性がOxymoronというわけです。
このOxymoronは曲中に何度も出てくる重要なキーワードであり、この後の歌詞にも様々な矛盾や対比が出てきます。
ちなみにRN:おもしろくんは、ラジオネームに対して質問が面白くないという点で矛盾しており(辛辣か?)、OxymoronとO-Ku-Ri-Mo-No Sunday! のアナグラムにもなっています。(okusimoron→omosirokun、okurimonos)
言葉遊びが過ぎる。でもこれがこの曲の面白いところですね。
1番Aパート
キミは今日も一人きりで
(マイペース希望なんで)
窓の外を眺めていた
(大抵ぶっきらぼう、でもそうですね)
その横顔…振り向かせたい!
(ワタシが好きなワタシが好きならばワタシを好きでいてもいいですよ)
冒頭から、おもしろくんは大好きな人と噛み合わないことに悩んでいるため、ここで言う「キミ」はおもしろくんの想い人であり、颯パートはおもしろくんの、凪パートではその想い人の心境が描かれていることが分かります。(これはこの先の歌詞でも共通しており、颯パート=おもしろくん、凪パート=おもしろくんの想い人にそれぞれ対応していると考えます)
隣の席の大好きな人を「振り向かせたい」おもしろくんと「マイペース希望」なキミ。
2人はどうも噛み合っておらず、2人のチグハグな関係が描かれています。
また、「ひとりきりで窓の外眺めていた」に対して「マイペース希望なんで」と返すキミの様子から、キミは自分のペースを大事にしたいという自己愛のような思いがあり、他人によりそれが乱されることを危惧していることが伺えます。
だからこそ、自分を好きでいる条件として「ワタシが好きなワタシを好きならば」と返しているのです。
好意を拒む訳ではないが、自分を曲げたくもない。そんな「マイペース希望」なキミの在り方が描かれており、おもしろくんが頭を悩ましている原因はこれなのでしょう。
また、「振り向かせたい」「マイペース希望」という部分ですが、これは颯と凪の"アイドルへの動機"というパーソナルに繋がっています。
2人は言わずと知れた双子の姉妹、生まれた時からずっと一緒でした。まさに2人で1人な状態です。しかしながら、彼女達はそんな状態をあまり良く思っておらず、颯は比較されるように評価されてきたこと、凪は互いが互いに歩調を合わせてきたことに対して一抹の不満を抱いていることがエピソードから読み取れます。
そして、その不満は「双子じゃない自分を見てほしい」という颯と、「それぞれの道を進むべき」という凪の想いへと繋がり、それがそれぞれのアイドルへの動機と強く結びついています。
これを踏まえると、颯の「振り向かせたい」、凪の「マイペース希望」はそんな彼女達の想いを表しているとも考えられ、キミの考え方との繋がりも感じられます。
ちなみに凪の「ワタシが好きなワタシが好きならワタシを好きでいていいですよ」というのは、元々アイドルへの興味が無くPのスカウトによりアイドルになった凪のスタートを想起させるものとなっており、強い個性を持ちながら自我を求める「自分は曲げないけど変化は受け入れる」という凪のスタイルとリンクしています。
これは“コイ”ですか?
(ワタシはワタシで、で、で、で、で)
(タワシは流しへ、へ、へ、へ、へ)
いいえ、“フイ”なんです
(キミはキミですね、ね、ね、ね、ね)
なんてチグハグなんだ!
(つまりそうみんなチグハグなんだ)
「”コイ”ですか?」に対して「”フイ”なんです」と返すことで、”コイ”が恋と故意のダブルミーニングになっていることが分かります。
恋ですか?に対して不意なんですと返してしまうような噛み合わなさ。しかしながら、恋というものは故意ではなく不意に落ちてしまうものであり、結果的に恋ですか?への回答になっているとも言えるでしょう。噛み合わない会話と揺れ動く恋心に対してなんてチグハグなんだ!と言っています。
対して凪パート。
ワタシはワタシだし、キミはキミ。自分達は皆それぞれ異なった個性を持つ異なった存在であり、だからこそ噛み合わないのは当然であること。
また、たわしが流しに行くように、異なった個性を持つ私達はそれぞれの道に行くべきだという「マイペース希望」な考え方がAパート同様に描かれています。
また、ここまで2人はずっと異なったパートを歌っていましたが、「チグハグなんだ」で初めて歌が重なり、2人の関係性の変化、即ちmiroirという新たな関係が始まったことを予感させます。このパートからメロディーに変化があるのも同様の意味を持つと考えられるでしょう。
ちなみに余談ですが2Dリッチではキミと黄身が掛かっています。(多分特に意味はない)
1番Bパート
ねぇ、空は“Blue”でも わたしの“Happy”あげたら
噛み合ってなくたって Go My Wayが重なって
One Two さん はい Yes 惹かれ合うの
「空は”Blue”でも」で青空(空模様)を想起させたと思えば「わたしの"Happy”あげたら」が対応していることから、感情的な意味でのブルー(心模様)にも掛かっていることが分かります。
青空を抽象的な表現として捉えるなら良い意味で使われるのが一般的です。ここでは、そんな良い環境(青空)に反してブルーになってしまっている心情の噛み合わなさを描いており、大好きな人と隣の席になったのに話が噛み合わなくて悩んでいるおもしろくんの現状とリンクします。
また「"Blue"なキミ」と「"Happy"なわたし」が対比になっていて、2人の心情はまさにチグハグ。
しかしながら、そんな「"Blue"なキミ」に「わたしの"Happy"」をあげられるのは、2人が異なる存在、チグハグだからこそなのでしょう。
私達はそれぞれ違うからこそ補えなえ合えるし、惹かれ合う。
ここではそんな「チグハグさの肯定」を歌っています。
この「チグハグさの肯定」は、双子でありながら正反対な2人だからこその魅力、チグハグな面白さをコンセプトにするmiroirのユニット性にもリンクしており、それが私達だと力強く肯定する彼女たちの在り方を表現していると言えるでしょう。
また、エピソードでは凪が颯の背中を押す場面が何度かあり、双子じゃない自分を見て欲しいとひとりを夢見る颯が2人でいることの楽しさを取り戻すまでが描かれており、そういったエピソードとの繋がりも感じられます。
1番サビ
Tig-Tig-Tig キミを捕まえて
Hug-Hug-Hug だけどハグしない
…なんで? (say,Why?)
裏腹Color 二人はTig-Hug-Oxymoron(Hay!)
Tig-Tig-Tig ツカズ/ハナレズで
Hug-Hug-Hug チカク/テ/トオイ
キミがそばにいる今日は Tig-Hug-オクリモノSunday
前述した通りTig⇔Hugでの対比、チグハグとの掛詞になっており、 Tig(鬼ごっこ)→キミを捕まえて
Hug(~を抱きしめる)→ハグしない
と続きます。
キミを捕まえるけど、ハグまでは出来ない。
ハグしたいけどもう一歩が踏み出せないおもしろくんと、ハグして欲しいのにしてくれないことに不満を感じるキミ(想い人)が共になんで?と問い掛けるという、なんとももどかしい2人の距離感と裏腹な気持ちが描かれています。
そんな正反対で噛み合わないキミだけど、いや、だからこそなのでしょう。そんなキミが側にいてくれるだけで今日という日はなんとも愛おしく思え、まるでSundayのように輝いて見えるのです。
ちなみに「裏腹Color」というのは裏腹な気持ち、異なる個性、颯と凪のCo(ブルー)とPa(オレンジ)の属性やイメージカラー(颯が浅葱色、凪がピンクで補色の関係)での色の対比といった3つの対比に加えて、「裏”同胞(はらから)”」にも掛かっており、正反対な双子である颯と凪を表現した詩になっています。ワードセンス天才か?
2番Aパート
(ワタシたちそもそも別人
楽しみも趣味も違うし
アタマの中 ココロの中)
それぞれなんだ
(それでもキミが知りたいし
ホントの自分でいたいし
あとはもうさ ちゃんとそうだ)
真正面からどーん
ここから2番に入ります。
1番でも示したように私達は楽しみも趣味も頭や心の中でさえ異なる別人です。
別人である私達がそれぞれの道を進む為には、自分が自分でいる為には、私達は離別する必要があるのかもしれない。
それを理解していて尚、キミが知りたいし、本当の自分でいたい。
ならばもうその答えは一つ。「真正面からどーん」していけばいい。
異なる存在である互いを認め、本当の自分でキミと向き合っていくこと。
チグハグな私達がそれぞれの道を進む為に本当に必要だったのは2人が離別することではなく、本当の自分で真正面からぶつかっていくことなのだという1番からの繋がりと変化が見られます。
また、1番Aでは颯パートの裏で凪がラップを入れるような構成で2人のチグハグさを強調していましたが、ここではそれぞれがそれぞれのパートを歌うことで、2人の関係の変化が表現されており、双子の姉妹からmiroirというアイドルユニットになった颯と凪の変化との繋がりも見えてきます。
エピソードで、Pは2人で1人だった双子の颯と凪を「miroir」というアイドルユニットとして、「アイドルの久川颯」と「アイドルの久川凪」として定義しました。
つまり、互いの個性が埋もれてしまうような双子の姉妹の関係を、一緒でありながら互いの個性を尊重し、互いに魅力を高め合える双子のアイドルユニット「miroir」という関係として再定義したのです。
これにより、「双子じゃない自分を見て欲しい」と言う颯と、「それぞれの道に進むべきだ」と言う凪のそれぞれ感じていた不満と不安が解消され、当初アイドルに興味のなかった凪もアイドルに興味を持つようになります。
「キミが知りたいし、ホントの自分でいたい」
凪は双子の姉妹である自分達の個としての価値を求めています。この2つの想いは「それぞれの道を進むべきだ」という凪の考え方の根元にあるものであり、これが凪のアイドルへの動機に繋がっています。
「真正面からどーん」はそんな凪が2人の関係の変化を経て得たアイドルへのモチベーションを踏襲したものであるとも言えるでしょう。
ここでなら、見つけられるかもしれない。本当の自分と、本当のキミを。
それに気付いたなら、あとはもう「真正面からどーん」するだけです。
これは“アイ”ですか?
いいえ、”ユー”なんです
なんかギクシャクだけど
1番同様「“アイ”ですか?」に対して「“ユー”なんです」と返すことで、”アイ”が愛とIのダブルミーニングになっていることが分かります。愛ですか?に対してYouなんですと返してしまう会話は相変わらずギクシャクしています。
本当の自分でキミと向き合いたいと思う気持ちは愛なのか?さらに言えば、”I”が掛かっていることからこれは自己愛なのか?という疑問提起とも考えられます。
だとすれば、”You”なんですという回答は対象愛を表してるとも考えられ、「他人を愛すためにはまず自分を愛すること」それこそが愛なのだという愛ですか?への回答になっています。
しかしながら、愛ですか?に対応する”ユー”は”友”だと考えるのが普通であり、その想いはすれ違ってしまっている訳です。
加えて、次のパートを読むと、藍⇔夕での対比も含まれているようにも考えられ、愛⇔友、I⇔You、藍⇔夕というトリプルミーニングになっています。
また、「コイですか?」と尋ねていた1番から、ここでは「アイですか?」に変化しています。
「他人を愛するためにはまず自分を愛すること」つまり、「確立した自己愛」こそが愛には必要なのであれば、恋とは「未熟な自己愛」を抱えた状態だと言えます。
だとすれば、離別することでそれぞれの道に進もうとした2人の在り方はまさに「未熟な自己愛」そのものであり、そこから本当の自分で向き合っていくことで自己愛は確立されていくのです。
そうして、恋は愛へと昇華されていく…そんな2人の変化が描かれています。
2番Bパート
真っ赤に染まるココロは “ユー”のススメ
遠慮なんてしてないで てやんでいでぶつかって
Four Five Six せーの 近づいてく
まず「ココロは”You”のススメ」の部分ですが、真っ赤に染まる夕焼けの”夕”、心を真っ赤に染めたのは”You”であるという「”You”の勧め」、その気持ちこそがキミを知るための手段であるという「”You”のすすめ」、更には「ココロは言うの進め」という意志といったようにあらゆる意味が内包されています。
「真っ赤に染まる」は1番の「空は”Blue”でも」と対応しており、青空から夕空へ。また1番の「One Two さん はい」から「Four Five Six」へ、という時間経過が見られ、それに合わせて青い(人間的に未熟な)心からの成長も表現しており、miroirとして変化した2人の姿ともリンクしています。
2人は相変わらずチグハグだけど、だからこそ惹かれ合う。 そして、2人は共にありながらそれぞれの道を進んでいける。
そのことに気付いたなら、あとはもう自分の心に従って真正面からぶつかっていくだけです。そうすることで2人は近付いていくのでしょう。
2番サビ
Tig-Tig-Tig キミに伝えたい
Hug-Hug-Hug だけどハグらかす
…なんで? (say,Why?)
大切だから言えない Tig-Hug-Oxymoron(Hay!)
Tig-Tig-Tig 永遠みたいな
Hug-Hug-Hug 一瞬を
ただキミと 分かち合いたいの
Tig-Hug-想いよ届け
そうして真正面からぶつかっていこうと思い、キミに想いを伝えようとしますが、何故かハグらかしてしまう。それは大切だからこそ言えないという思春期特有のアレでしょう。
言いたいけど言えない、言って欲しいのに言ってくれないという2人の気持ちのすれ違いが描かれています。
キミといる永遠みたいな一瞬が大切だからこそ壊したくないし、分かち合いたい。
「キミに伝えたい」「だけどハグらかす」「大切だから言えない」「永遠みたいな一瞬」といった2人のチグハグな心情がOxymoronになっており、相反するOxymoronな気持ちを前に踏み出せずにいる状況に思わず「想いよ届け」と願ってしまう..まさに青春です。
Cパート
(1LDK 2LDK アナタの望みはどういう系?
駅近物件? ペットもOK? それとも一人暮らし1K?)
(あなたは何が欲しいんだっけ?) (け?)
(あなたはどうしたいんだっけ?) (ん?)
(大きな声でせーの)
アイしてたいの!
はーちゃんの「ん?」が最高。
唐突に間取りの話が始まりますが、これは凪の趣味であるマンションポエムが由来になっており、本当の自分で向き合いたいという気持ちの表れです。
またその自己主張の先で「あなたはどうしたいんだっけ?」と続くことで本当のキミが知りたいという気持ちも表しており、2番A同様、凪自身の「それぞれの道に進むべきだ」というパーソナルとリンクしています。
アナタは何がしたい?どうしたいのか。
その問いに2人は「アイしてたいの!」と高らかに答えます。
この”アイ”は”愛”と”I”に掛かっており、本当の自分でいたい自己愛と、キミを愛していたい対象愛という2つの愛の共存を意味します。
これまでチグハグな自分達を肯定し、本当の自分で向き合っていくことの大切さを説いてきた2人。
そんな2人が辿り着いた結論こそが、チグハグな2人でも自分を愛しながら他人も愛していけること、また自分を愛することで本当の意味で他人を愛することが出来るという自己愛と対象愛の共存です。
当初2人は共にあることで本当の自分でいられなくなってしまうのではないかと危惧していました。
しかしながら、実際にそんなことはなく、共にありながらそれぞれの道を進んでいけることに気付いた2人。それに気付くことが出来た2人は互いのチグハグな存在を認め、「本当の自分」でぶつかっていこうとしました。
これにより、2人は本当の意味で自分を、そして他人を愛していけるのです。
未熟な自己愛から自己愛の確立へ。自己愛から対象愛へ。そして、恋から愛へ。
人は「本当の自分」を大切に思うことが出来て初めて、他人の中にもある「本当の自分」を大切に思うことが出来るのでしょう。これこそが本当の愛であり、自分のことも他人のことも愛していきたいという2人の在り方こそが「アイしてたいの!」なのです。
この結論が冒頭の質問「大好きな人が隣の席にいるのに~」へのアンサーにもなっています。
また、これはエピソードでmiroirが見つけた答えに繋がります。
「双子じゃない自分を見てほしい」という颯と「それぞれの道を進むべき」という凪の想い。2人で1人の双子である彼女達は当初袂を分かつ事でこの願いを叶えようとしました。
しかし実際はそんな必要はなく、2人は共にありながらもそれぞれの道を進んでいけるし、互いに個性を活かし合い、高め合える。また、2人でしか見られない輝きがあること、2人ならもっと輝けるということをmiroirというユニットで示したのです。
大好きな人と共にそれぞれの道を進んでいく、一見矛盾しているようにも思えるmiroirの「Oxymoronの宣誓」...その答えこそが「アイしてたいの!」なのでしょう。
ねぇ ちゃんと見ていて ワタシらしい“ワタシ”と
手と手をとりあって Go My Wayで飛び出して
せかい中 書き換えちゃお
「ワタシらしい”ワタシ”」というのは互いが自分らしさと向き合い、そして互いとも向き合っていくことを表しており、互いの個性を尊重しながら手を繋いで飛び出していく。miroirとしての2人の新たな関係性が描かれます。
このワタシを2つ重ねるという2人の新たな関係性、それこそが”アイ”を2つ持つ「m”i”ro”i”r」というユニットです。
そして、そんな2人が示した自己愛と対象愛が共存する「Oxymoronの宣誓」はLOVE&PEACEな”博愛”へと広がります。
自分を愛していけたから、隣にいるキミを愛していけるし、それ以外の誰かのことも愛していける。
自己愛から対象愛、そして博愛へ。
曲を通して「アイ」の在り方を伝えるmiroirの存在は、聴く人の背中を押して、いつか世界中を書き換えてしまうのかもしれません。
ラスサビ
Tig-Tig-Tig キミを捕まえて
Hug-Hug-Hug だけどハグしない
…なんで? (say,Why?)
裏腹Color 二人はTig-Hug-Oxymoron(Hay!)
Tig-Tig-Tig ツカズ/ハナレズで
Hug-Hug-Hug チカク/テ/トオイ
キミがそばにいる今日は Tig-Hug-オクリモノSunday
キミを捕まえるけど、ハグしない。1番サビと同じ歌詞ですが、ここまでのストーリーを踏まえると、ここではキミと共にありながら、束縛しないという意味へと変化し、互いが愛し合いながらそれぞれを尊重するという2人の在り方が見えてきます。
「なんで?」
それはきっと2人が「Tig-Hug」な「Oxymoron」だからです。
互いの個性を尊重しながら時には補い合って、それぞれの道を2人で進んでいけるキミ。
だからこそ、互いの存在が互いにとってまるで奇跡のように感じられ、そんなキミがそばにいてくれる今日という日はまさに神様からのオクリモノ。それがO-Ku-Ri-Mo-No Sunday!なのです。
Tig-Tig-Tig …Hey!
Hug-Hug-Hug …Oxymoron,Yes
Tig-Tig-Tig …Hey!
Hug-Hug-Hug …オクリモノ,Yes
(This program is brought to you by twins of the oxymoron.)
Tig-Tig-Tig …Hey!
Hug-Hug-Hug …Oxymoron,Yes
Tig-Tig-Tig …Hey!
Hug-Hug-Hug …オクリモノ,Yes
物語の締めくくりです。
「This program is brought to you
by twins of the oxymoron.」は、ラジオ番組の締めの定型句らしく(調べました)、意味としては「この番組はオクシモロンな双子の提供でお送りしました」という感じになるそうです。
ラジオ番組に来たお便りに答える場面から曲がスタートしているため、終わり方もそれっぽくなっており、番組のエンディングと共に曲が終わります。
前述しましたが、この一節があることでこの曲自体が冒頭のおもしろくんの恋愛相談への回答になっていることが分かります。
噛み合わなくても別に良い。何故なら、チグハグだからこそ私たちは惹かれ合うし、大好きな人と共にありながらそれぞれの道を進んでいけるから。
miroirの活動を通して気付いた2人の「Oxymoronの宣誓」。
それを持ってして凪は「うーん、別に良いんじゃないですかね」と答えたのでしょう。
また、このラジオ番組という背景により、曲を通してmiroirが説いてきたおもしろくんの恋愛相談への回答に第三者(リスナー)へのメッセージ性が付与され、miroirからこの曲を聴く人へのエールになっています。
そのmiroirからのメッセージ、即ち"オクリモノ"こそがこの曲「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday! 」なのです。
最後に
長くなりましたが考察は以上です。
説明し忘れましたが、まだこの曲はCD化されていないため、ここで引用した歌詞は公式のものではありませんのでその点はご了承ください。
また、ここまで書いたものはあくまで個人的な解釈の1つであり、その曲の難解さから様々な解釈が出来るのもこの曲の魅力です。もしかすると、人によって様々な解釈が出来るというのもこの曲のテーマに掛かっていて、数多のミーニングや言葉遊びが歌詞に含まれているのもその為なのかも…?なんてことを思ったりもしています。
一見、ポップでキャッチ―なこの曲ですが、ふとこの曲の世界に足を踏み入れると、その歌詞やメロディに沢山のギミックが仕組まれていることが分かり、なんとも厚みのある難解な世界観が見えてきます。
それがこの曲の面白いところであり、miroirの魅力なのです。
miroirとして新たなスタートを切った2人のアイドルの物語はまだ始まったばかり。Go My Wayを2つ重ねる彼女達が今後どのような姿を見せてくれるのか。
また、目前に迫った彼女達の初舞台になる7thライブで、どのような景色を見せてくれるのか。
颯と凪、長江里加さんと立花日菜さんが二人三脚を2つ合わせて見せるステージはきっと素晴らしいものになるでしょう。
彼女達のこれからが非常に楽しみです。
ところで、このブログを書き上げるのに時間を割き過ぎて予習が全く進んでいません。どうすればいいですか?
んー、べつにいいんじゃないですかね?だって...
おわり。